2024年1月22日 クリオス・インターナショナル 伊藤ひろみ
デンマークの民間精子バンク、クリオス・インターナショナルで日本事業担当ディレクターを務める、伊藤ひろみです。
突然の発表となり誠に恐縮ですが、今月末をもってクリオスを退職することになりました。
この場を借りて、退職の経緯や現在の思いを皆様にお伝えさせていただきます。
クリオスには2019年2月から丸5年間お世話になりました。
元々、私の夢は無精子症のご夫婦のために日本で日本人の非匿名(身元開示)精子ドナーを集めることでした。
ドナー不足によって精子提供がなかなか受けられず苦しんでいる無精子症のご夫婦に出会い、欧米の精子バンクのように「ドナーを集める」ことに特化した機関がドナーを集めて全国に配送することで、患者様が地元で速やかに治療が受けられるようにしたいと思ったのです。
また、欧米では普及しつつある「非匿名の精子ドナーから提供を受け、子どもの出自を知る権利を保障する」という選択肢を日本に広め、親となる方々が堂々と子ども達にテリング(真実告知)を行えるようにすることが重要ではないかと考えました。
子どもの出自を知る権利が保障できれば、精子提供に対する社会の見方も大きく変わることでしょう。
この夢を実現するため、2016年から日本の「有識者」に手紙やメールを送り、面談を申込み、日本における精子バンクの必要性についてご意見をお伺いさせていただきました。
今思えば、ヒアリングというよりは厳しい「指導」を受け続けたようなものでした。
「日本では難しい」「非医療従事者が生命倫理に関わることを勝手に始めてはならない」「ビジネスとして生殖医療に関わってはならない」「法整備を待たなければならない」といったご意見をいただきました。
「顕微授精の出現により、男性不妊はもはや解決したようなものだ」というコメントまであり、精子提供を必要とする「超少数派」を救おうなんて人はそうそういないのだと分かりました。
医師も、研究者も、政治家も、私が個人としてお会いできた方は概ね、民間精子バンクの必要性に対しては後ろ向きでした。